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2012年8月5日 フツーのクルマ。 [クルマ]

citroen_ds5.jpg
Panasonic LUMIX FX-500

CITROEN DS5に試乗した。
最新のシトロエンたるDS5に、ほんの少しだけ試乗してみたのである。

勿論、導入を目論んでのテイスティングな試乗では無い。経済状況が足枷になっている悲しい現実は目を背けるとしても、3年半以上を経たと言え現有のC5 tourerに些かの、燃費はまぁアレだが、不満も無い現状では浮気心も湧かないのである。そもそもが赤のボディカラーの選択肢がないDS5は、その時点で興味の対象外なのだ。

日本では(日本だけでは無いけど)シトロエンは変わったクルマと認知されている。アバンギャルドなどと形容詞が付帯したりしているが、これはあくまでオリジナルのDSやCXやGSそしてBXに対する賛辞(?!)である。機械的な統合コントロールのハイドロニューマチック系のメカニズムをはじめ特異な操作性、主張が勝るデザインは確かに強烈なシトロエンの魅力だった。とは言え以前よりのコンベンショナルなサスペンションを持つ車種と同様に最近はハイドロ系の車種にあっても実は”そんなに”変なクルマではないのである。

ショールームに置かれたDS5は、C5やC3そしてDS3とDS4と並ぶ中にあっては特に目立った存在では無かった、が、これはあくまでデザインコンシャスなシトロエンの中での話だ。例によって写真で見るよりずっと好印象な事は勿論、DS5は美しいデザインである。現行C5からシトロエンのデザインは、Xantia以降ややトーンの下がっていたデザイナーの発言力が増してきたように感じている、C5に見られる細部の拘りや面の使い方の美しさがDS5では”更に遠慮無く”発揮されている。もともとシトロエン車に希薄だった車格だとか用途と言った理由付けはさらに無く、あくまでDS5と言う存在なのである。
ds5_inside.jpg
比較的コンパクトな全長ではあるが、反して大きな車幅もあって室内は広い。フランス大統領専用車としては後席の広さがと訝しんでいたが杞憂のようである。たっぷりとしたシートを中央寄りに配するのがシトロエンの文法であり、このDS5もそれに則しているが運転席中央にはミッドシップスポーツカーの様なダッシュボードから連なる大きく高いセンターコンソールがある。C5と同じ短いガングリップタイプのシフトレバーには適した高さではあるが、タイトなコックピット感がDS5の成り立ちへの強い主張であろうと感じた。

やや高価なオプションではあるが時計バンドのモチーフのクラブレザーシートは柔らかく絶妙で、まさにシトロエンだった。縫い目を生かした革張りのメーターフードを始め室内の造作は悔しくも我がC5を凌駕している。なによりオーバーヘッドコンソールを含め良くわからないスイッチが沢山あるのがBXまでのシトロエンを思わせ嬉しかったりするのはマニアな性かも知れない。

ディーゼルエンジンの日本導入の目処のない今、ハイパワー版やHybrid 4の選択肢のないパワーソースは”あの”1.6Lターボエンジンのみである。排気音がチューニングされているC5のV6ガソリンエンジンオーナーから見れば、なんの面白みもないタダの実用エンジンでしか無い。スマートキーシステムでダッシュボードのスイッチを軽く押すとさらっと起動する、静かで振動も抑えられていて車内のデザインと相まって少し未来的である。もっとも、必要にして十分とか速くはないが遅くないといった常套句の走りである事は間違いない。実は気張ると結構速いのがシトロエンであるのだがこのエンジンは黒子に徹しているように感じた。ただ必要十分にDS5を走らせる割に燃費は良好のようである。

C4ベースでややコンパクトとはいえ、それなりの大きな車であるDS5がハイドラクティブの不採用な上、前輪がマクファーソンストラット、後輪がトーションビームと知った時点で失望していたが、それもある程度は杞憂だった。かつてのセルフセンタリングの復活なのか、まるでトルクステアかと感じるほど強く中立に戻るステアリングの違和感を除けば乗り心地も安定感も上質だった。同様にブレーキの感触もしっかりしたボディもあって上質なものだ。

とても良いクルマだ、間違いなく。BX以前の濃密なシトロエンも想わせながら、美しいデザインの内外装、静かで快適な走り、実用性の高い空間と美点ばかりである。ただ、しかし、よく出来たフツーのクルマである。過去乗り継いだシトロエンに共通する何かが足りないとC5 tourerに乗換え帰路につく時思った、この楽しさが足りないと。恐らく目指すクルマの未来が確定してしまったのだろう現代にあって、同じ目標を目指す、つまり出来の良い車はメーカーの個性は希薄なのだと思う。ヨーロッパの経済危機も有るだろうがシトロエンは販売の落ち込みでWRCからの撤退の噂も聞こえている、今、企業としてのシトロエンに望まれているのはマニア好みのシトロエンらしさか普遍的な車作りなのかは解らない。ただ、シトロエンがフツーの自動車メーカーになってしまうのは寂しいである。

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