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2009年7月29日 合理化と文化 [カメラ]

pc_muze.jpg
PENTAX K10D DA16-45mm


PENTAXカメラ博物館である。
その昔、西麻布の交差点脇にあるクロマートって現像所に急ぎの現像の上がりを待つ時、六本木方向に坂をちょっと上ったところのペンタックスカメラ博物館で時間をつぶしたりしていた。

写真学科出身ならナダールだのニエプス、はたまたダゲレオタイプという名称は馴染みの良いものなのである。木目の壁がクラシカルなこの博物館は居心地の良い場所であった。

ペンタックスカメラ博物館は日本最初のカメラ博物館だそうである。日本写真機検査協会が文化事業として日本カメラ博物館を開館したのはペンタックスのそれから32年も経ってからなのだ。しかも有料なくせに展示品が妙にしょぼい日本カメラ博物館にはもっと頑張って欲しいものである。

西麻布から益子へと随分遠くへ移転しちゃうんだね、と思ってから早くも16年。収蔵品も数千を数えるほどになっているという。ペンタックスの益子の工場は広くて美しい公園工場だと以前聞いた、昼休みにラジコン飛行機を飛ばしてたりなんて話も聞いていた。今はHOYA株式会社PENTAX益子事業所となったその場所に初めて出かけた。

我がシトロエンC5ツアラーのカーナビは一発でPENTAXカメラ博物館を指し示した。地図で見ると予想以上に広いファクトリーである。HOYAの合理化施策でここは閉鎖されるのである。つまり同時にカメラ博物館も今月一杯で閉館なのであった。昨日の新聞記事でその事を思い出し急ぎ今日出かけたのである。

西麻布の頃と変わらないと思った。確かに広くなった展示スペースは、色も形も記憶のままだと感じた。しかし感嘆すべきはその展示物が何も古びてはいない事である。勿論クラッシックカメラに古びていないという形容詞は正しくないのだろうが、展示品はどれも美しいコンディションが保たれている。一点一点につけられた丁寧な解説も展示のボリュームも見事である。このすばらしいコレクションは散逸してしまうと新聞は書いていた。

文化的財産は合理化という企業理念の前には脆い存在である。HOYAになった今、モノもヒトも場所も旧ペンタックスからどんどん失われていく。無くしたものは戻らない。益子事業所の親切で人当たりの良い守衛さんや社員さんは、ペンタックスのカメラ魅力と同じだ。フレンドリーだけど生真面目にキチンと作ってあったペンタのカメラ、もう手にする事は難しい時代になってしまったのかもしれない。

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