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2019年11月22日 モノクロという名の文化。 [カメラ]

tmaxdev.jpg
Nikon Keymission 80
怪しい写真は、ちょっとした事件の記録だ。
被写体はコダックのT-MAXデベロッパーのボトルだ。

実のところ随分前のことであるが、取り敢えず証拠写真(?)をおさえたままになっていた出来事だ。先日のビネガーシンドロームのモノクロフィルムの話題の、まあ続きである。

ある日の事、ふと気が付くと床の隅に水溜まりができていた。つまりそれは、天井の照明が明瞭に映り込むくらいの水たまりだ。すぐ近くには猫のトイレが鎮座するが故、体調不良での粗相を疑ってしまったのは猫にお詫びだ。ともかく相当な量の液体が本来水気の無いはずの床の隅に溜まっているのである。

猫のオシッコではなかった。もはや結論を急ぐと、その謎の液体はT-MAXデベロッパーの原液だ。補足説明すると、要するにそれはモノクロフィルムの現像液である。富士フイルム製のミクロファインやコダック製のD-76といった現像剤を長く常用していた。粉末で売られているそれを正しい水量と温度を管理して現像液を作ってフィルム現像していたのである。先日のビネガーシンドロームの憂き目にあったフィルムの殆どもそうして現像してきた。そして、T-MAXデベロッパーとはコダックが”新しい”モノクロフィルムであるT-MAXに合わせて発売した現像液で、麺つゆのように好みの濃度に希釈して使用するすこしお手軽な現像液だ。

つまりその原液が、しかも未使用新品、と言っても大分前に買って残ったものだけれど、の全量が、加水分解なのか崩壊したボトルから流出したのであった。水溜まりとして拭き取れた量はボトルの容量のほんの僅かにすぎない、2階のこの床と壁の隙間から漏洩した相当量の強アルカリの薬品が悪影響を露呈しないことを願うばかりだ。ちなみに補足説明を加えると、フィルムの乳剤面の感光し黒化した銀粒子の潜像を表すのが強アルカリ性の現像液で、その進行を止めるのが強酸性の氷酢酸、そしてその銀粒子を固定するのが弱酸性の定着液である。そしてそれを流水で水洗して水滴防止剤を通して乾燥してネガフィルムの完成だ。

富士フィルムの中の人が、こんなに言われるとは思わなかった、と言っていた一度は販売が終了したモノクロフィルムが世間の声に押されて新規に再生産され再発売だ。白と黒の連続諧調のモノクロームな世界は未だデジタルでは再現しきれないことは確かだ、そして、あらたまったモノクロプリントにそこはかとない文化を感じることも確かだ。とは言え化学反応を基礎とするモノクロフィルムはビネガーシンドロームや化学薬品といったアナクロな不安も付帯することも忘れてはいけない。

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